”映画界の美しき天才”グザヴィエ・ドランとは何者か

entertainment | 2017.1.18

映画界の美しき天才 グザヴィエ・ドラン

2009年カンヌ国際映画祭。20歳の映画監督の処女作が全世界に衝撃を与えた。

 

Photo par Guillaume Simoneau #smokingonpicslikeits2003

xavierdolanさん(@xavierdolan)が投稿した写真 –

映画監督グザヴィエ・ドラン。

 

その端正な顔立ちから、俳優としても活躍する、今世界が最も注目する映画監督のひとり。

 

自身もセクシャルマイノリティをカミングアウトし、マイノリティの痛みと希望を描く。

 

現代社会を”生きづらい”と感じる全ての人々の共感を集め、またその独自の映像技術と芸術表現で世界を驚かし続けている。

 

前作『Mommy』公開から日本でもじわじわと話題になりつつある映画監督グザヴィエ・ドランのアイデンティティやそのスタイル、また最新監督作品まで詳しくご紹介します。

 

”グザヴィエ・ドランのスタイル”??

グザヴィエ・ドランはカナダ・ケベック州出身の現在27歳。俳優の父をもち、幼少期から子役として活躍。

 

Slut (photo Caitlin Cronenberg) xavierdolanさん(@xavierdolan)が投稿した写真 –

 

2009年『マイ・マザー』で監督・脚本を手がけると同作は第62回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、20カ国に売却されるという当時20歳のデビュー作が映画界では異例の評価を受けました。      

  以降、手がける作品の全てが国際的な映画祭で上映され、彼のスタイルは新時代の象徴となり、世界中でカリスマ的な人気を誇っています。      

 

なぜ彼の映画は、こんなにも人々を惹き付けるのか。    

 

その秘密は”ドランのスタイル”にあります。    

 

 

  Vocalises et masturbation dans la lavabo #multitasking   xavierdolanさん(@xavierdolan)が投稿した写真 –

 

「“変わってるね”と言う人たちは、違いを理解する知性に欠けている。」                         グザヴィエ・ドラン 

 

登場人物を真後ろからとらえるカメラワーク。スクリーンをインスタグラムのような1:1の比率に切り取る独自の映像表現。時に沈黙し、時に爆発する音楽。        

 

グザヴィエ・ドランの最大の特徴は、画一化を嫌い、自分の内から溢れる自由な発想にのみ支配されたその表現方法。          

 

映像表現から透けて見えるのは、彼の生き方そのもの。    

 

セクシャルマイノリティという自身のアイデンティティと向き合いながら、マイノリティを誇りにして突き進む彼のスタイルこそ、彼の最大の魅力であり、多くの憧れを集めている理由のような気がします。      

 

子役として覗いた大人の世界、セクシャルマイノリティとして生きる現代社会。きっと私たちには安易に想像できない、苦悩や悲しみがあったと思うのです。しかし、ドランは世界に憤慨するのでも心を閉ざすのでもなく、時には踠きながらも実に楽しそうに、映画の世界で新たな扉を開き続けています。      

 

”人と同じ”ことに安心感をおぼえ、いかに”普通”の道をはみ出さずに生きれるかを基準にする現代社会に慣れた私たちは、ドランのスタイルに驚き、そしてその生き方に憧れをもって眺めたりしているのです。      

 

グザヴィエ・ドラン監督作品

どの作品も観終わったあと、とても悲しい様な、苦しい様な、やるせない、そんな行き場の無い感情で一杯になります。

でもきっと、ずっとずっとその作品のことを考えてしまう。

たしかに笑顔の主人公もスクリーンには映っていたはずなのに、思い出すのはラストシーンのあの表情。そんな誰の心にも引っかかる、グザヴィエ・ドラン監督作品の紹介です。

『マイ・マザー』(2009)

監督・脚本・製作・主演 グザヴィエ・ドラン

The people at @plainarchive are freakin masters of blu-Ray artwork. So honored they did this.

xavierdolanさん(@xavierdolan)が投稿した写真 –

  17歳の時に描いた半自伝的衝撃のデビュー作。19歳で映画を撮り上げると、第62回カンヌ国際映画祭監督週間部門で3冠を達成。

 

処女作品にも関わらず、一躍世界の注目を集める。  

 

ゲイの高校生が母親との関係に悩むという自己の投影をもとに描いた。彼自身、セクシャル・マイノリティであることをカミングアウト。  

 

『胸騒ぎの恋人』(2010)

カンヌ国際映画祭「ある視点部門」。ドラン自信が主演を務める第2作。

  ゲイの少年と親友の少女が、同じ男性に恋をする。”人を愛する”その喜びと、すこしの愚かさ。  

劇中のファッションと美しすぎるドランに心奪われます。  

『わたしはロランス』(2012)

22歳のドランにとって初めて”大人”を主人公にした作品。

出典元 www.uplink.com

トランスジェンダーの男性教師ロランスが、女性になる事を決意。恋人であり親友である女性との関係を琴線細やかに描ききる。  

絶えず揺れ動く、ロランスの心をそのまま映すカメラワークと色彩美。ドランの感性が爆発した監督作品。    

『トム・アット・ザ・ファーム』(2013)

ドラン初のサイコサスペンス。再び監督と主演、また編集や衣装までひとりでつとめる。

出典元 www.uplink.com

    思わず息をのむ展開と沈黙。多くを語らない登場人物たちの、思惑と暴力が入り乱れる。    

 

『Mommy/マミー』(2014)

2015年の架空のカナダを舞台に、ADHDの息子とその母親が模索する、愛とは何か。

出典元 mommy-xdolan.com

  カンヌ国際映画祭で初のコンペティション入りをはたし、パルムドール受賞最年少記録かと期待されるほどの好評を得た。    

 

1:1の画面から解放される主人公スティーブの心と共に、観ているこちらの心まで画面の中を疾走していく。      

 

 

グザヴィエ・ドランからのメッセージ

デビュー以来、監督作品の全てがカンヌ国際映画祭出品されるなど世界に認められる映画監督となったグザヴィエ・ドラン。

 

 

I am so proud of bringing this Grand Jury Prize home for #justelafindumonde Thank you @festivaldecannes. So long x xavierdolanさん(@xavierdolan)が投稿した写真 –

自身の評価がどれほど高まろうとも、社会的マイノリティの声を発信し続ける彼の映像表現にはひとつの信念が感じられる。

彼の描く世界に生きるのは、”人と違う”ことを恐れず生きる彼の精神そのものなのです。

第67回カンヌ国際映画祭での受賞スピーチが、全世界の同年代のクリエイターに勇気と希望を与えました。全文を引用します。

とても緊張して興奮しているのですが、できる限りがんばって話したいと思います。

この伝説的な会場にいるというだけで圧倒されています。このような賞をいただき、審査員の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

先週以来たくさんの愛を受け取って、僕たちは愛するために、そして愛されるために映画を作っていることを、つくづく実感しています。これは『胸騒ぎの恋人』のリベンジです。

ごく手短に、関係者の方々に謝意をお伝えします。プロデューサーのナンシー・グラントさん、パトリック・ロイさん、(MK2の)カルミツ家の方々、(フランスの製作・配給会社の)ディアファナ社のスタッフ、(カナダの)Eワンフィルムズのスタッフ。欠点だらけの僕を理解してくれて、一緒に仕事をしてくれたことは、この上ない喜びでした。

僕の映画を信じて、さまざまな問題から僕を守ってくれた(カンヌ映画祭総代表の)ティエリー・フレモー氏と、(カンヌ映画祭事務局の)クリスティアン・ジュヌ氏の友情にも謝意を送ります。

俳優でありクリエイターでもある、アンヌ・ドルヴァルさん、スザンヌ・クレマンさん、アントワーヌ・オリヴィエ・パイロン君。あなたたちを尊敬し愛しています。

そして僕の家族と友人たちにも感謝します。ほかにも名前を挙げ忘れている御礼すべき方たちがたくさんいると思います。

この場をお借りして、ジェーン・カンピオン審査員長にお伝えしたいことがあります。フランス語は自分の母国語であり世界一美しい言葉だと思っていますが、皆さんに聞いていただきたいので英語で話します。

『ピアノ・レッスン』は僕が16歳のときに、義母に「何を観ればいい?」と訊いて初めて観た映画です。あれを観て僕は、魂と意志と力を持った美しい女性を──被害者や被写体ではない女性を、映画で描きたいと思ったのです。あなたの『ピアノ・レッスン』は僕の人生を決定づけた映画の1本です。今この壇上であなたの前に立っていることに深い感慨を覚えます。

それから、自分と同世代の人たちに向けて、短くお伝えしたいことがあります。僕はまだ若いですが、過去数年このクレイジーな映画ビジネスの世界にいた自分の経験から話します。

誰しも自分が好むことをする権利があるにも関わらず、あなたのやることを嫌悪し、あなたを忌み嫌う人たちもいるでしょう。でも夢を持ち続けてください。そうすることで一緒に世界を変えられるからです。人々を感動させ、笑わせ、泣かせることで、人々の意識や人生を、ゆっくり変えていくことができるのです。政治家や科学者だけでなくアーティストも世界を変えられるのです。

望むことに限界はなく、夢を抱き、挑戦し、努力し、あきらめなければ、どんなことでも実現可能なのです。僕がこの賞を受賞したことこそが、その証にほかなりません。

第67回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門審査員賞

受賞スピーチ全文訳

 

2.11ロードショー最新作『たかが世界の終わり』

”美しき天才”グザヴィエ・ドランが家族を描く。

出典元 gaga.com

 

半自伝的デビュー作から前作まで、より普遍的なテーマに近づいてくるごとに人々の共感と反応は大きく、またその評価は世界的なものへと変化してきた。

2016年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。アカデミー外国語映画賞カナダ代表作品。

 

 

「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ。母のマルティーヌは息子の好きだった料理を用意し、幼い頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌは慣れないオシャレをして待っていた。浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ、彼の妻のカトリーヌはルイとは初対面だ。オードブルにメインと、まるでルイが何かを告白するのを恐れるかのように、ひたすら続く意味のない会話。戸惑いながらも、デザートの頃には打ち明けようと決意するルイ。だが、過熱していく兄の激しい言葉が頂点に達した時、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる――――。

2017年2月11日、新宿武蔵館他 全国ロードショー