シティーボーイよ、旅に出よう。ー 神戸編 ー

Boy.公式
    旅がしたくなった。 何があったわけでもないけれど、ふと、そう思ってしまった。 シティーボーイなんて立ち位置に憧れ、田舎から東京に出てきて3年目の初夏。朝日がまぶしい。   毎年なにかがあるんじゃないかって期待してはいたけど、どうやらそんなに都合よく、予定というものは沸いてくれないらしい。   今までは期待して、夏の終わりに裏切られてばかりだったけど、この前どこかで読んだ詩に書いてあった。「若者よ、旅に出なさい」と。   6畳半の狭い部屋で急に思い立った僕は、すぐに何着かの服と本をカバンに詰めて家を出た。 行き先は決めていない。でもせっかくなら行ったことがない街に行きたい。 海も、山も、街もある場所。 思いついたのは、小さいころ両親が住んでいた「神戸」だった。   話に聞く神戸の街は、異国情緒に溢れていて、でもどこか懐かしい匂いがした。 なけなしの財布の中身を確認しつつ、往復分の切符を買い、出発寸前だった新幹線に飛び込んだ。 何もないかもしれない。でも「何か」を見つけに行こう。 背中で閉じたドアと薄暗い新幹線の連結口が、そう僕を駆り立てた。     神戸には意外と早く着いた。それはあっけないほどに。 神戸らしさを感じたかった僕は、まずは北野異人館に向かった。   初夏というには暑いほどの日差しを受けながら、坂を登る。 だが、すぐに気力の限界を迎えテラスのあるカフェに入ることにした。   相席でのご準備になりますが、よろしいでしょうか? 店員さんにそう言われ、とにかく休みたかった僕はすぐに了承する。   …それは、運命の出会いだった。 緑に囲まれたテラスの一席に腰掛けている彼女は、幼いながら自信ありげな瞳をしていて、身につけているワンピースや麦わら帽子、黒い髪がそのお嬢様らしい雰囲気を一層強くしていた。   すみません、失礼します。 そう言いながら座った僕は確かに彼女に興味津々だった。   せっかく旅に来たんだ、知らない誰かと仲良くなるのもいいじゃないか。 彼女への瞬間的な好意なのか、一人神戸までやって来たという高揚なのか自分でも理解できなかったが、それを脳が理解する前に彼女に話しかけていた。   「はじめまして、神戸の人ですか?」 「はい。」 「そうなんだ、僕は初めて神戸に来たんだ。えっと…年はいくつ?」 「えっと…22歳です。」   年上かよ…!という衝撃に打たれながらも、意外とおしゃべりな彼女のペースに引き込まれてしまった。 神戸の素敵な場所、美味しいご飯、最近ハマっている映画のこと、別れたボーイフレンドと今日明日で神戸を回るつもりだったこと。 太陽も空のてっぺんを通過し、街に影がでてきた頃、急にその一言を言われた。 「もし時間があるんだったら、今日付き合ってよ。」 予定もなく、あてもなかった僕は二つ返事で彼女のプランに乗ることにした。 山から海へ、足早に駆け抜けていく彼女を追いながら僕は自然に笑っていた気がする。 時折見せるアンニュイな表情に、結末のみえない物語を想起させられながら。 少し肌寒くなって来た夕方、シンボルの一つでもあるらしい神戸の港を臨みながら、また急なお誘いをいただいた。   「キレイだよね、私、ここからの景色とても好きなの。」 「でも、神戸ってこんな都会な美しさだけじゃないんだよ!」 「よかったら明日、私の地元に来ない?案内してあげる。」   彼女の海は、どんな景色なのだろう。 断る理由のなかった僕は、彼女の口から述べられた最寄りの駅名と時間を矢継ぎ早に書き留め、夏の初めの台風のように去っていく彼女を尻目に、そう思っていた。       翌朝目覚めた僕は、伝えられた場所に向かった。 そこは昨日よりも海も、空も広い空間だった。 煌煌と注ぐ太陽の下それを跳ね除けるように、 __彼女がいた。 「遅い!汗かいてもたやん!」 時間通りに来た僕をそう責めながら、でもどこか嬉しそうに波打ち際におりていく。 昨日より少し無垢さが強調されたような服装ではしゃぐ無邪気な姿を見て、本当に年上なのかな…と、僕は確実に惹かれていた。 ひとしきり、波打ち際を駆ける彼女についていくことを楽しみ、木陰で休憩しながら、ここに連れて来てもらった真意を聞いた。 「私、この街が好きなんだ。山があって、海があって、人がいて、でも誰もいない世界もあるこの街が。」 「付き合ってくれてありがとう。ここは前、彼と来たんだ。」 「だから一人で来るには明る過ぎて、寂しかったの。」 「ありがとう。」 お別れする時間が徐々に近づいていることが、その横顔から伝わって来た。 都心に向かう電車に乗る。 どこか、さっきまでの物憂げな表情はなくなり、彼女と少し距離が近づいた気がした。 たった2日のうちに、僕は彼女の「何か」になれた気がして、でもそれは「彼女にとっての特別なもの」ではないのかなと、彼女の寂しさをそのまま、引き継いでしまった気がした。   「カフェに行かない?」 もうさよならの時間だと思っていた僕は、その発言に少し驚きながら一緒にカフェに吸い込まれた。 こんな無邪気な表情もするんだ。 初めて会ったのが昨日だと思えないくらい、彼女のいろんな表情をみたつもりだった僕はまた、驚いていた。 「甘くて美味しいね」 そんなありきたりな感想も、聞けて嬉しかった。 店を出て雑踏に紛れそうになり、甘い世界から急に現実に戻ってしまった気がした。   なんとなく、もうお別れかな…と、急に理解した。 最後の「そろそろ、さよなら。」をどちらからも言えない気がして、ただなんとなく、人通りの少ない道を歩いた。   突然、立ち止まった彼女は切り出した。 「短い間だったけど、付き合ってくれてありがとう。」 「もう帰る時間だよね?」 「また、神戸に遊びに来てね。待ってる。」 それはごく自然なことだ。 彼女と僕は、本来すれ違うこともない人同士だったはずだから。 でも、素直にこう思える。   この街で、彼女に会えてよかった。 心の中に見つけた、それは恋などではない何か。 開放感や、自由に似た感情だ。   知らない街の水先案内人は、知らない街をカラフルに、でもどこかレトロに彩ってくれた。 自分の街に帰ろう。きっと前とは違った景色が見れるはず。 そう、思った。     若者よ、シティーボーイよ、旅に出よう。 それは冒険でなくていい、海外旅行なんかでなくてもいい。 行ったことがない街に出かけてみよう。 まだここにない何かが、必ずあなたを待っているから。 素敵な出会いと体験があなたを待っているから。   あなたの旅に素敵なヒロインが現れることを祈って。             今回出演いただいた「伊藤優里」さんのプロフィールはこちら!   名前:伊藤優里(いとうゆうり) 出身地:愛知県 生年月日:1994年11月13日 星座:蠍座 身長:148cm 血液型:A型 好きな色:水色 マイブーム:テーマパーク(USJ、ディズニー)へ遊びに行くこと。   はじめまして!2012年3月から2016年6月まで約4年半アイドル活動していました”ゆうり”こと”伊藤優里”です。今回『Boy.』さんに初登場させて頂きました\(^^)/ 撮影は神戸を舞台にしています。撮影での感想は…”モデル”というよりも、この『Boy.』さんの撮影を機会に改めて自分が神戸観光を楽しんでしまって…私の素顔、ありのままの私を皆さんに沢山お見せしてしまいました(笑)。 とても楽しい撮影になりました。皆さんも是非神戸に遊びに来ませんか?