【1枚の布が僕たちを包む】YANTOR(ヤントル)の魅力とは

fashion | 2017.9.16

YANTOR(ヤントル)

出典元 yantor.jp

みなさんは、YANTORというブランドをご存知だろうか。

YANTOR(ヤントル)は2008年、武蔵野美術大学卒業の2人のデザイナー、板倉弘祐氏と吉田賢介氏によって設立されたブランドである。

私達は普段、何のために服を着るだろうか。理想の自分に近づくため、自分を良く見せるためだろうか。デザイナーの彼らは、衣服を人と社会と繋げるためのツールとして捉えている。

そんな彼らが掲げたYANTORのコンセプトは、「SITUATIONS」。誰が着るか、どこで着るか、衣服は、使い方によって様々なシチュエーションに順応していく、という思いでこのコンセプトを掲げている。

出典元 yantor.jp

ちなみに、ブランド名は「YANTORA」というヒンドゥーの護符からつけられている。そこには、物に魂を込める、という意味があるそうだ。

今回は世界の伝統的な民族衣装を想起させるデザインのアイテムがあったりなど、今までにない独創的な衣服に心惹かれるYANTORの魅力について、迫っていこうと思う。

「ONE by ONE」衣服によって人と繋がるプロジェクト

YANTORの魅力に迫る上で避けては通れない彼らの代表的なプロジェクトが、写真家の青木勝洋氏とのコラボレーションで行われた、「ONE by ONE」というプロジェクトだ。

このプロジェクトでは、彼らの旅の途中で出会う現地の人達にYANTORの服を着てもらい、そこで撮った写真をルックブックに用いるということが行われた。

このプロジェクトに関して、このような言葉が綴られている。

あらゆる地域にはその地特有の文化がある
着ている衣服は文化や生活に身体を投影し、私たちにその人を想像させる
服を着るという行為はおそらく多くの人に撮って日々の習慣であり、他者の干渉のない日常的行為であろう
私たちは服を着せるという行為によりその日常の一部を共有し、直接的なコミュニケーションを試みる
相手の五感に訴えかけながら衣服はその空間に溶け込んでいき、やがて生活の一部となった風景が現れる
衣服を着るという日常的行為はシチュエーションによって姿を変え、
一人一人の人間の存在を引き立て、美しさを映し出す
衣服を着せるというコミュニケーションによりそこにいる人との繋がりが生まれ、
その時・その場所を共有することができる

この言葉とともに行われたプロジェクトでは、北インドのラジャスタン地方や、チベット文化圏のラダックなどで撮影が行われた。

出典元 yantor.com

出典元 yantor.jp

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普段は国も文化も全く異なる人々が、YANTORの服を通して繋がっていることがわかる。また、1枚の衣服が、現地の人々に着られることによって様々な表情に変化している。

それは、現地の人々の肌の色や瞳の色などの色彩感も大きく関わっているのではないだろうか。YANTORの衣服の独特の色合いがあいまって、まるでもともと着ていたのではないかと思わせるほど、自然に溶け込んでいるのだ。

また、写真が撮られているその場所も、現地の人々が住み、独自の文化が存在する場所であり、その場所にYANTORの衣服を纏って立つということはまさに、その時・その場所を衣服を通して共有するということなのである。

こうして作られていったルックブックは、モデルを起用した一般的なルックブックとは一線を画したYANTORの世界観が存分に溢れた物となった。

そこに映る人々は、モデルをしたことなどこれまで一度もなかっただろう。しかしそのYANTORの衣服を纏った彼らの姿は、誰かにマネできるものなどでは到底なく、とてもカッコよく、威厳のあるものに思える。

2017年秋冬コレクションからデザインを紐解く

2017AWのテーマは、”-subconscious / gold-“。

直訳すると、「ぼんやり」と「ゴールド」。一見交わることのないような2つの言葉が、YANTORの衣服の中で見事に融合している。

ゆったりとした黒のプルオーバーに映えるゴールドのスパンコール。潜在意識の中にひかるその人個人の魅力。それを引き出すのがYANTORの魅力なのである。

全て一枚布で作られているという服たちには、独特の落ち感があるのも魅力的だ。

ランダムに散りばめられたようにも見えるゴールドのスパンコール。実は緻密に計算されて装飾されたものなのではないだろうか。一枚でも目を引くものがある。

ドルマンラインニットカーディガンには、YANTOR独特の落ち感が存分に表現されている。布を纏うという意識から、体から離れた分量の落ち感が計算され、重力がかかることで完成するこの形。

まさに緩めの服が好きな方の好みにハマるのではないだろうか。

出典元 ovie.shop-pro.jp

手織りのカディシルクコットンを使用したロングシャツで、空気を含んだような軽さのある生地は一度着ると納得のいくハイクオリティーなもの。同素材のくるみボタンと、片側のみにあるポケットが特徴的な一枚だ。

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こちらのチェックのワイドパンツもぜひ押さえておきたい。少しくすんだ色味や、大きめのパターンのチェック、風に揺れる生地感など、好みに刺さる方も多いのでは。

これからの季節にも取り入れていきたい一枚だ。

上下リネンの素材で作られたプルオーバーとパンツ。しわ一つ一つもこの服の雰囲気を格上げしている。

意外と難しそうな色味のコーディネートも、YANTORが生み出すシルエットでなら挑戦できるはず。

出典元 www.store.palm-jpn.com

ウール100%を使用した、3タックが珍しいパンツ。圧縮により表面に独特の風合いが生まれ、目を詰めることで高い保温性を持つ素材が使われている。

テーパードシルエットの独特の形が美しい一枚である。

インドで生産したオリジナルツイードウールを使用した、ボリュームのあるワイドコート。人物の動きを想定したフォルムのデザインは、ゆったりとした形が特徴的だ。

着ることによって服の魅力が引き出されていることがわかる。

出典元 www.store.palm-jpn.com

YANTORといえばこれと言っても過言ではない、ケサコート。元々は僧侶が着ている袈裟(ケサ)をコートで表現したものだ。

縫い線を極力少なくして、布という平面が身体という立体を通すことでフォルムが出来上がる。YAMTOR特有の布の織り方により、どこにもない一枚が出来上がるのだ。

出典元 www.store.palm-jpn.com

(ケサコートを使ったコーディネート)

センハナ的まとめ

とあるセレクトショップで、YANTORのシャツを見かけたことがある。ひっそりと販売されていたのだが、私はその一枚に強く惹かれた。ゆったりとした、素朴なデザイン。

なのによく見てみると素材感だったり布の織り方だったりがとても面白くて、一枚一枚への強いこだわりを感じた。

世界中の様々な国、人種、違う文化の中で生きる人たちと、自分達とが繋がる為のツールが衣服であるという考え方の元のプロジェクト。

それらをこの日本という国で発信していく発信力。そこにはデザイナーのクリエイティブな想像力と、強いこだわりが詰まっている。

私たちはこれからも、YANTORの表現する世界に魅せられていくだろう。

>> YANTOR公式HP