【本当は怖い】あなたの知らない藤子F不二雄ワールド

entertainment | 2015.8.27

藤子・F・不二雄の異色短編集

出典元 shutterstock.com

 

「ドラえもん」や「パーマン」「エスパー魔美」で有名な藤子・F・不二雄氏。

藤子先生の作品を読んだことの無い日本人などいない、と言い切れるほどポピュラーな漫画家だ。

しかし、先ほど挙げた子供向け漫画の陰に隠れた数々の短編集の存在をあなたは知っているだろうか?

タイトルに「異色」とあるように、文字通り藤子先生としては異色の作品が多数掲載されている本作品シリーズ。中でも私がお気に入りの話をいくつか紹介していこう。

 

世にも奇妙な作品たち

●ミノタウロスの皿

タイトルだけならば聞いたことのある方も多いかもしれないこの一作。

藤子氏の移植短編の中でも有名な作品であり、シンプルでありながら深く考えさせられる内容の傑作。

あらすじ

時は近未来、宇宙航行をする主人公はマシントラブルにより未知の惑星へと不時着することになる。

そこには自分たち地球人と同じような見た目をした人間の姿が。見慣れた生物の存在に喜ぶ主人公だが、ある異変に気付く。

その惑星は、牛が人のように言葉を話し人間を家畜として飼う、まさに地球とは価値観が「逆転」した世界だった。

 

主人公はその星で出会った女性に恋をするが、地球の価値観では美しい女性もその惑星ではただの「食糧」。

牛に食べられる少女を見ていることしかできない主人公。
奇妙な価値観に心をねじ切られるような思いを抱きながら、地球へと帰還する・・・

といった話である。どうだろう?興味をお持ち頂けたであろうか。

藤子氏の短編集ではこういった『価値観の倒錯』をテーマとした作品が非常に多く、そのどれも私たちを奇妙な世界へと引き込んでくれる。

気楽に殺ろうよ

あの『ドラえもん』の作者が付けたとは思えない、非常にバイオレンスなタイトルの本作。

タイトルからはなかなか内容を想像できないと思うが、読んでみれば「あぁなるほど」と思うこと間違いなしである。

あらすじ

ある日、主人公(平凡なサラリーマンパパ)が目覚めると、周りの世界にある違和感を覚える。一見すると特に変化は無いが、自分が今までいた世界と何か違うような・・・。

とりあえず普段通り過ごしてみると、その違和感の「正体」に気付く。

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その世界は、まるで今まで自分が過ごした世界と「価値観が真逆」だったのだ。

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人命は本当に尊い?性欲は隠すべきものじゃない?食事は見られて恥ずかしい?

自分の持つ価値観と全く異なる世界に放り込まれ混乱する主人公。

医者に通いながら何とか世界に順応していくが、その先に待っていたものとは・・・

あえて結末を言わないのは、この話に関しては知らない方が読んだ時に何倍も楽しめるからだ。

結末が気になる読者諸君には、ぜひ本を手に取って頂きたい。奇妙な読後感と満足感に包まれることは間違いないだろう。

 

並平家の一日

前二作とはまた毛色が違うタイプであるが、私が非常に気に入っている一作。目の付け所に「なるほど」と膝を叩きたくなること間違いなしの良作だ。

あらすじ

「並平家」というとある一家にフォーカスしながら話は進んでいく。

この並平家という家族、何をするにしても平均的なのだ。

家族構成も1男1女、旦那はサラリーマンで奥さんは専業主婦。
子供二人も、とりわけ頭がいいわけでも悪いわけでもなく、グレてもなければ優等生なわけでもない。
見るテレビ番組は流行りもの。
流行っている服を着て、週末は流行りのスポットへお出かけ。
どこを取っても平均的。

しかし、そんな「取り柄のない」ところが「最大の取り柄」だと注目され、とある大きな計画に利用されるのだった・・・


という、なんとも面白いんだか面白くないんだか分からない話である。

要するには、この『並平家』を『日本の縮図』と見て、マーケティングを行おうという話。
この平凡な家族からは想像もつかないほどにシュールな作品となっている。

最後まで読めば、良い意味で期待を裏切られること間違いなしである。

定年退食

このタイトル、もちろん誤字ではない。定年退「食」なのだ。

老後ののび太くん、といった風貌の老人が主人公である。
近未来の日本、老人が抱える悩み、世間の流れの辛辣さといったものにフォーカスした話だ。

あらすじ

主人公は定年をとうに迎えた74歳の老人。作品内の世界では、増加する人口により世界中が食糧危機へと陥っている。
そのため、食糧は少しでも大事に保存し、細々と生活をする主人公。

そこに「二次定年特別延長者」の抽選機会がやってくる。

この世界では、定年に一次定年と二次定年があり、二次定年以降は国が「一切の社会保障を断ち切る」というものなのだ。

二次定年延長者に選ばれるため手を尽くすも、結局は抽選漏れしてしまう主人公。
そこに、街頭テレビから速報で首相声明が流れる。

「国は二次定年年齢を72歳と定めます」

「二次定年を迎えた方々を扶養する力を我が国は持っていません」

「人類が迎えている未曾有の危機を乗り越えるためなのです」

ある種の「死刑宣告」とも言えるその声明に絶望する主人公。もはやこの国に自分の居場所は無いのだと悟った。

あらすじを見て頂ければ分かるように、近年の超高齢化社会にもつながるものがある。
しかも、この話が書かれたのが1973年のことだというのだから驚きだ。

生にしがみつつも、ある種の諦めを持っている主人公の悲壮感。見開きで展開される首相の声明。
そして何といっても、ラストで自分たちの境遇を受け入れながら語る主人公のセリフは、短編とは言え涙なしには見られないものである。

「世にも奇妙な物語」のような恐ろしい話から、こういった悲しいストーリーまで創造できる藤子氏の才能を大いに感じられる一作だろう。

 

ある日・・・

圧倒的に短く、しかし引き込まれるタイトルだ。

私が最も好きな作品の一つで、内容自体はあっさりしているが、日常に潜む恐怖や非日常への危機感を持たないことの恐ろしさをたっぷりと味わえるだろう。

あらすじ

とある自作フィルム同好会を中心にして話は始まる。
各々が持ち寄った作品を見せ合い、あれやこれやと皆で感想を言い合いながらほのぼのとした会が進んでいく。

そこに、いかにも怪しげな一人の会員が持ち込んだ作品が。

タイトルは「ある日・・・」

作品を見た他の会員たちは、あまりの馬鹿馬鹿しさ、突拍子の無さに苦笑いするが・・・

本作品は、短編の中でもかなり短い一作となっている。
ページ数が少ないというよりも、ストーリーが他作品と比べて圧倒的にコンパクトになっているのだ。

しかし、読了後に感じる恐怖は100ページ以上のサスペンス作品に勝るとも劣らないものがある。

分かってはいるけど、深く考えていなかった。そんな日常に潜む恐怖を鋭くえぐってくるのだ。

 

今こそ読みたい藤子作品たち

いかがだっただろうか、あなたの知らなかったであろう藤子不二雄ワールドは。
ここに紹介した作品は本当に一部の一部であり、私自身もまだまだ紹介したい話が山のようにある。

もしこれをきっかけに興味を持って頂けたのなら、ぜひ書店で藤子・F・不二雄短編集を購入して欲しい。

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出典元 www.amazon.co.jp

今なら藤子不二雄全集なるものも発売しているため、容易に見つかることであろう。
また、短編集では1冊につき20話弱の作品が掲載されており、コストパフォーマンスもバッチリだ。

1作品ごとの重量感もあるため、小旅行のお供などにいかがだろう?