【まるで絵画】映像が綺麗なアート系映画5選
映画における映像
今回はアート系と題しまして、映像美のわかりやすい映画を取り上げます。
映画は昔、と言っても19世紀からですが、白黒のサイレント映画でした。技術の進歩のおかげで、今のような鮮明な映像になったのです。
色を帯びたことによって、色彩で新しい意味を含ませることができるようになりました。
そんな進歩に肖って、面白くて映像が綺麗な映画をお届けします。
厳選されたアート系映画5本を一挙ご紹介
●アメリ
『アメリ』2001年/フランス
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
内向的で外との関わりが薄い主人公・アメリは、
駅で、ある男性・ニノと出会います。
しかし一歩を踏み出さなければ恋愛が始まりません。
そんな風変わりな彼女を描いたラブストーリー。
この映画の注目ポイントは、緑・赤・オレンジ。
ポスターでもそうですが、劇中でアメリが着ている服はほとんどが赤か緑。
赤は”情熱”、緑は”冷静”のようなイメージを連想させますが、まさにそのように、赤は自分で道を切り開く時の、緑は一種保身的な、成長の色を表しています。
そしてオレンジは調和を表します。
これは駅のホームで、ニノに出会う直前のシーンですが、駅は緑、アメリは赤い服を着ています。
普段、孤独で不器用な彼女の性格が緑で描かれ、内に秘めた熱い思いがあるということが赤い服で表現されています。
壁に描かれているオレンジは、その先の展開を暗示しているのです。
ニノがアメリのところまで辿り着いたシーンです。
部屋の外であるニノの側は緑、部屋の内であるアメリの側は赤で、この部屋に入れば漸く2人で赤い世界に踏み入ることができるということを示しています。
ラストシーンは2人で仲良く二人乗りです。
全体がオレンジで、2人の調和がとれたことが表わされています。
この映画における色は、ただの色彩にとどまらず、様々な意味を包含しているのです。
●グランド・ブダペスト・ホテル
『グランド・ブダペスト・ホテル』2014年/ドイツ,イギリス
監督:ウェス・アンダーソン
映画として様々な要素の絡み合いを、絵本で包んだような作品。
ホテルのコンシェルジュと、そのロビーボーイのお話。
コンシェルジュのグスタヴ・Hがお客様(84歳女性)の事件の容疑にかけられ、ロビーボーイであるゼロ・グスタファと共に解決していくというサスペンスのようなストーリーです。
この映画で特徴的なのが、カメラワークです。
平面な構図と横移動がほとんどで、それがまた絵本を感じさせます。
このように部屋や人物を真横から捉えています。
この撮り方に、テンポの良さなどが加わって、強いコメディの印象を与えます。
内容のほとんどが老人となったゼロの回想で、1985年、1968年、1932年の時間軸に分かれており、アスペクト比がそれぞれ異なっているのも面白い点。
1968年のシーンでは現代使われている2.35:1。
回想シーンでは昔使われていた1.33:1です。
この表現技法によって”今”のシーンではないことを表しています。
そしてウェス・アンダーソンの映画において、
テーマの一つであるのが家族。
今回は家族の不在による「絆」です。
列車で移動中のこのシーン、コメディ感が強い映画なので泣けないはずが泣けます。
また、戦争が起こることが新聞で報道され、ゼロが大慌てする場面があります。
そういった歴史に対する風刺的要素も含まれているのです。
このように映画としての価値や、必要な要素が詰まったものを、映像美によって仕上げた作品となっております。
気になった方は是非。
●ミツバチのささやき
『ミツバチのささやき』1973年/スペイン
監督:ビクトル・エリセ
1940年代、スペイン内戦後を舞台に、幼い主人公アナの家族や日常が描かれています。
フランケンシュタインの映画が街にやってきます。
アナはそれを見て、フランケンシュタインがなぜ殺されたのかわかりません。
姉イサベルの嘘によって、本当にいると思ったアナはフランケンシュタインを探しにいきます。
忘れてはならないのが歴史的背景。
内戦後のフランコ政権による独裁政治です。
両親は内戦を経験しており、父フェルナンドは、蜂に関する哲学的な文章を書いていたり、毒キノコを踏み潰す場面があります。
母は、そこにいない誰かに宛てて手紙を書きますが、終盤でそれを焼きます。
彼らの行動に、フランコ政権に対する風刺が隠されています。
また、姉イサベルはアナに対して嘘をついたり、いたずらを仕掛けたりします。
イサベルは何も知らない純粋なアナとは違って大人の部類に入っているのです。
姉イサベルを通してしか物事を見ていなかったアナが、脱走兵と出会う事件や、いたずらなどを通して、知を獲得していきます。
最後のシーンで、窓際に立ち月の光に照らされるアナには未来へ望む眼差しが伺えます。
歴史的事実に対して、どう向き合っていくのか。
そんなことを考えさせられました。勉強します。
●ビッグ・フィッシュ
『ビッグ・フィッシュ』2003年/アメリカ
監督:ティム・バートン
父親のホラ話にうんざりしていた息子ウィルと、ある日倒れてしまった父親エドワード。
親子の和解をテーマに繰り広げられるティム・バートンの世界。
人生なんて、お伽話?
大人になったウィルは、父親がホラ話ばかりするので、結婚式の時にそれをきっかけに絶縁状態に。
ガンで倒れてしまったと聞き駆けつけ、話の真相を聞こうとします。
しかしまたもやホラ話を続けるエドワード。
巨人だったり、
変わった村だったり、
サーカスだったり。
現実とエドワードのストーリーを行き来するのですが、その対比が面白い。
現実は青みがかったライティングなどにしたり、お伽話の中では暖色系を使って優しくしています。
若い頃のエドワードが、睡蓮のお花畑を作ってプロポーズする場面。
とても綺麗です。
ビッグフィッシュとは英語で、「大嘘をつく」みたいな意味があります。
この映画を通して、親子の在り方、人生の在り方について考え直してみてはいかがでしょうか。
●Dolls
『Dolls』2002年/日本
監督:北野武
ものづくりはみな一緒だと思うんですけど、芸術家として作るのか、世の中に身を据えて作るのか、その二手に分かれると思います。
厳密にはグラデーションのようにはっきりとはしませんが。
北野映画にはその中間のものが多い中で、Dollsは芸術家よりのものだと思います。
この映画は、3つのお話が同時進行していきます。
それぞれが一組の男女の物語となっているラブストーリーです。
結婚を決めていた恋人・佐和子を捨て、社長令嬢と式を挙げることになってしまった松本。
佐和子はそれを原因に自殺を図り精神を病んでしまいます。
松本は佐和子を連れ出し、二人で放浪の旅へと出ます。
日本の春夏秋冬がとっても綺麗に描かれています。
これは是非見て頂きたいと思います。
同時進行するもう一つのストーリーは、事故に遭い、芸能界を引退せざるを得なくなったアイドルと、熱烈に、一歩手前から追っかけるファンのお話です。
どうしてもアイドルに会いたかったファンが、事故に遭いファンに会わなくなったアイドルのために取った行動には驚きました。
お花畑を歩くシーン。お花好きなので嬉しいです。
最後がヤクザの組長のストーリー。
若い時分の彼は、お弁当を作ってきてくれる女性と公園のベンチで会っていましたが、別れることになってしまいました。
年を経て公園に行ってみると女性が座っています。
再会を果たしますが彼女は彼に気付いておらず、徐々に仲良くなっていきました。そんなお話。
心温まるかと思いきや、悲しい。悲しくて、儚くて、綺麗なラブストーリーです。
洋画に比べると、この映画は驚くほどセリフと音楽が少ないです。
台本もかなり薄いのではないでしょうか。
それだけに日本の文化である「間」や、景色などが綺麗に見られます。
まとめ
それぞれの映画を、様々な観点からご紹介しました。
どれも映像が美しいので、見ているだけでも面白いと思います。
これを見て一つでも手に取って頂けたら嬉しいです。